【The darling person of glasses】
眩しくて目が潰れてしまう。 ああ、どうすれば君が見えるのか。 ガラス一枚隔てた世界が眩しい。 「なぁ、なんか面白い事ねぇーかなぁ…」 黒髪の少年が欠伸を噛み殺しながら呟く。それに向かいに座っていた鳶色の髪の少年がチョコレートを頬張りながら答える。 「面白いこと?君の顔とか?」 「なんで俺の顔が面白い事なんだよ!」 がばっと起きだし目の前のチョコレートを頬張ってるリーマスに問いつめる。 「正に今の顔が面白いんだけど」 にこにこしながらシリウスの顔を指さし更にシリウスの口に今まで頬張っていたチョコレートを押し込む。 「…!ぐふっ…」 押し込まれたシリウスは涙目になりながらチョコレートを吐き出す。 「ほら面白い事だろう?」 「なんて事しやんがるんだ…!俺が甘いモノ苦手なの知ってるくせに!」 「だって君が“面白い事”を望んだんだよ?」 恨めしそうな目でリーマスを見たシリウスは隣に座ってた茶色の髪の少年に泣きつく。 「ジェームズ〜」 「無理だよ。リーマスに勝てるのはリリーくらいだよ。お前では勝てないのは分かってるだろう?」 今の二人のやりとりを見ていたジェームズが笑いながら不満そうな親友の肩を叩く。 「なぁピーターもそう思うだろう?」 向かいに座ってる小柄の金髪の髪の少年に同意を求める 「うっうん。リーマスには誰も勝てないよね」 「なんだと!俺だってなぁ」 今にもピーターに掴み掛かりそうなシリウスをリーマスが更に口にチョコレートを詰める。 「シリウスうるさい」 そのままシリウスは沈没。そんなシリウスには目も暮れずジェームズに視線を移す。 「でも本当になんか楽しいことはないかなぁ…ジェームズ」 「うん?そうだね…」 ジェームズが辺りを見回す。今彼等が居るのは、皆が食事をとったりする大広間だ。 隣のレイブンクロー生はチェスをしている。更にその向こうにあるテーブルはスリザリンのテーブルだ。 元々人が集まる場所には余り近寄らないスリザリン生は他のテーブルに比べて人が少なかった。 その中で一人のスリザリンの生徒に目が留まった。 (あれは…) そのスリザリンの生徒は大きな本を抱え、大広間から出るところだった。 「ジェームズ…?」 ある一点から目を離さないジェームズに不審を覚え、その視線の先をリーマスは見て納得した。 「珍しいね。彼が大広間に居るなんて、ねぇジェームズ…」 ジェームズの方を振り返ろうとして目線を離す瞬間彼と目があった。正しくは彼がリーマスでは無く、その少し先のジェームズを見ていた。 一瞬にしてその顔が嫌悪感に包まれる。本を抱え直し、セブルスは大広間を出て行った。 「相変わらず嫌われてるみたいだね…」 振り返ってジェームズを見たらその顔が楽しそうに微笑んでる。 「何か思いついたみたいだね…でも程ほどにしないと今以上に嫌われるよ?」 「そうだね、肝に銘じておくよ」 そう言いながら立ち上がる。 「何処に行く…ああ愚問だね」 「ん?じゃ僕は行くから。そのバカ犬をそろそろどうにかした方が良いじゃない?」 隣で未だに白目を剥いてるシリウスを指さす。 「良いよ。ほっとくから」 「そうかい?それじゃね」 手をヒラヒラしながら大広間を後にする。 ジェームズの後ろ姿を見送りながらため息を吐く。 「ホント素直じゃないよね、二人とも」 小さな声で呟く。 「何か言ったリーマス?」 隣でお菓子を頬張っていたピーターが目線を向ける。 「いや、何でもないよ」 ◆◆◆◆◆ 閑散とした図書館。 今はテスト週間でも無いので、人は疎らだった。 セブルスは奥の窓際の席に本を降ろし、席に着いた。その場所は余り人が近寄らない禁書棚の近くで他に比べて雑音が少なく、セブルスはこの席を気に入っていた。 いつもの様に本を開き、羊皮紙を取り出し、今日授業で行った箇所を復習・予習を始める。 一定のリズムで刻む指先はしなやかで、少し猫背の背中を丸めて机に向かう姿は何故か綺麗だった。 どれくらいそうして居ただろうか。ふと隣の席に人気を感じ目線を上げる。 まず先に目に入ったのは赤と金の紋章。その紋章にセブルスは眉を顰める。続いて目に入ったのはキラリと光る銀縁眼鏡。その眼鏡の先にある顔を見て更に顔を歪め、無言で席を立ち片づけを始めた。 「ちょっといきなりそれは酷いんじゃない?」 ジェームズは慌ててセブルスの腕を掴み、席に座らせ、上からセブルスの顔を覗き込む。 「邪魔だ、どけ」 ジェームズの問いには答えず、掴まれていた手を払い、片づけを再開した。そんなセブルスにムッとする。 「逃げるの?」 そんな言葉を投げかけてみる。予想通り彼は手を止めこちらに顔を向けた。 ジェームズはニヤと口元を緩める。 「僕から逃げるんだ?」 「誰がッ…!」 「じゃあさ…」 僕を見てよ セブルスの腕を取り机に押し倒す。油断したセブルスは簡単に腕に中に入ってきた。 上からセブルスを見る。驚きと嫌悪感を混ぜ合わせた様な表現し難い顔をしていた。いや、嫌悪感の方が勝ってるか。 「あれ?急に大人しくなったね」 「…離せッ!」 我に返りジェームズの腕の中で暴れるセブルスとの距離を更に縮め、その耳元に小さく囁く。 「…良いの?人が来るよ?」 一瞬セブルスの動きが鈍くなる。 「僕は別に構わないけど…君は大変なんじゃない?」 喉で笑う様にジェームズは更に目を細める。 「……何か用なのか」 辛うじて言葉を紡ぐ。喉が乾いて上手く言葉が発せない。 「んー…そうだね…」 セブルスの頬に手を添え、優しく撫でる。 「……君が好きなんだ」 その言葉を理解するまでに、有に3秒は掛かってのではないかと思う。思わず目を丸くしたゼブルスはジェームズを見上げた。 何の脈絡も無く、そう言い放つジェームズは真剣顔をしていた。その表情は今まで見た事が無く、いや、一度だけある。 それはクディッチをしてる時の表情だった。楽しそうに空を舞い、獲物を見つけるハンターの様な視線。それはとても真剣で、でも何処か不安そうで。 何故か今否定の言葉を発したら、ジェームズが泣くと思った。その考えを一瞬にしてセブルスは打ち消す。 (まさか…この傍若無人の様なヤツが?) でも、何故か。 胸が苦しかった。こんな不安そうな表情をしてるジェームズを見て、云いようの無い不安に駆られる。 ふぅ、とジェームズが手の力を抜き、セブルスの上から退いた。 「……ねぇ、何か言ってよ…」 少し陰りが入った表情は見えなかった。だが、声が震えてるのはセブルスにも分かった。 「………何を」 「…え?」 「何故、いきなりこんな事を言うんだ?」 ジェームズを見上げ、その表情を伺う。 また悪戯だ、と警報を鳴らしてる頭と、何故、と思う心が相反する。 一瞬、その表情が緩んだ。 「何故かな、僕も分からない。でも今云わないと後悔すると思ったんだ」 君が居なくなりそうだから。 だってもうあと半年で卒業だ。 君と僕の道は、卒業を機に別れる。それはもう交わる事無い道。 本当はこの6年半君が好きだった。 僕は幼稚で、それを認める事が出来なくて、それでも君に恋焦がれてやまない。 君が眩しくて、それは僕にはない光りだから。 「おい、何故泣くんだ…」 気付いたら涙が流れていた。 セブルスが慌てて僕の涙を拭ってくれた。 「……ったくビックリさせおって」 「フフフ…優しいね」 「なっ…」 一瞬の隙を突いて、唇を掠める。 耳まで真っ赤に染まった君が可愛くて意地悪したくなるよ。 「僕は君が好きだよ」 君は僕のこと好き? 「…知るかっ!」 真っ赤になった君が愛しい。 思わず僕は抱き締める。この体温がいつまでも傍に居てくれたら。 眼鏡の向こう。 それは光りの世界だった。 |