「コドモが生まれるんだ」


親友の突然の発言に、俺は目を丸くさせた。















大人しく




















「・・・コドモ・・・って、ガキ、だよな?」
「うん、そう。」


ジェームズの咥えている煙草から消炭が落ちる。
俺の持っている煙草は紫煙を辺りに撒き散らす。


「・・・エバ・・・じゃなくて、リリーとの?」
「あったりまえじゃん、なに言ってんの」


からからと軽く笑うジェームズ。
卒業して2ヶ月ちょっと前、ジェームズとリリーが結婚して1ヶ月くらい。
いやジェームズが手ぇだしたんだからもっと早くても可笑しくない訳だったんだけど。
ていうか学生結婚でも普通っぽいんだけど。
急に言われたらビックリするって言うか・・・頭に入ってこない。


「・・・チチオヤ、おまえだよな?」


がすっ
ジェームズの拳が後頭部を直撃。
100万ガリオンの笑顔付き(自称)で殴るなよ!


「我が友パットフッドよ、要らぬ口は閉じておくべきだ」
「・・・そうします。くそったれ」


フィルター近くまで火が攻め寄る。
そろそろ捨てるか、と煙草を口から外す。
ポイ捨てを制するように、ジェームズは携帯灰皿を差し出す。


「・・・」
「さっきから沈黙が多いようですが、いかがいたしましたか黒犬様?」
「・・・や、別に。」


違和感を感じた。
ジェームズらしくないような、まるで違う人と一緒にいるような違和感。
穏やかになったというか・・・静かになったというか。
じろじろ見ていた俺を怪訝に思ったのか、ジェームズは笑った。


「これでも親になるんだから、ちょっとは道徳的になるよ」


うっわ、すげぇ発言!
道徳!道徳だって!ジェームズが道徳って言った!
ジェームズが道徳?ありえねぇ!
全力で笑ったら物凄いスピードで殴られた。


「〜〜〜っ」
「失礼なことばっかり思ってるから」


ジェームズはフン、と鼻で笑ったあと直ぐに、目を細めた。
満足そうな表情に俺は少しだけ羨ましいと、嫉みに似た感情を覚えてしまった。
そしてそれ以上に、良かった、という気持ちが強かった。





「まだ何週目らしくて、お腹とかおっきくないし、全然実感湧かないんだけどさ」



「やっぱり、嬉しいよね」





さっきから感じていた違和感の正体が判った。
ジェームズがなんだか違う人のように思えるのは、俺がよく知ってる『学生』のジェームズじゃないからだ。
もう既に『父親』のジェームズ、だからだ。
(とは言え、俺にはイマイチ『父親』というものが理解出来ない)

それでもとても満足そうな、否、満足なんだろうジェームズの顔を見ればやっぱりジェームズはジェームズで。
携帯灰皿を差し出したり、変な違和感を覚えたり、道徳なんていう言葉を言ったり、変に大人しいジェームズもジェームズで。
自分のことのように俺は、とても嬉しくなったのだ。


「良かったな」
「うん。あ、シリウスさ、生まれてくる子の名付け親になってみたりしない?」
「名付け親?そういうのはリーマスとかのがいいんじゃねぇの」
「リーマスだったらシュガーとかハニーとかって名付けそうだし、ヤだ。」
「確かに!じゃあ仕方ねーから俺が付けてやるよ、名前」
「とびっきりの、お願いしまーす」


子供が生まれるまでの約10ヶ月。
俺は名前を考えるのに唸るのだ。













13 大人しく * 瑪瑙
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