| 「何だろう?」 首をちょっぴり傾げたジェームズが歩いてきて、そう聞いてくるから。 一瞬だけ顔を見た私はすぐに本に目を落として、 「それって恋よ、恋、恋」 って言ってやったら。 「ああ〜、そうか!納得。いやぁ、は僕よりも賢いかもね!」 って言って去ろうとした。 ああ、本当アナタの脳内が"何だろう"よ! 「ちょっとお待ち」 私は読んでいた本を思いっきり閉じた。 パタン!と威勢良く閉じたそれからは古臭いニオイと、ホコリが大量に出ていた。そのホコリにむせていたら、ジェームズが私の前に座っていた。ニヤニヤとおかしそうに笑いながら。 「笑いたいなら笑うがいいわ!」 「別に?笑いたいなんて」 ジェームズは堪えきれないように笑いを噴き出しながら言った。その様子をむせつつもじっと見る。 「ただ…アで始まってホで終わる二文字の可哀想な子に見えたんだ。が」 あまりにも長く乙女思考でいたものだから、その言葉がズシン、と胃の辺りに重くのしかかった。 胃もたれしそうだ、うえ。でもここで「胃もたれうんぬん…」なんて言い出したら彼はきっとこう言う。 「行くかい?精神科に」ってね。 仕方ないから普通に返事をしようとした。 「遠ま、わ、しな言い方、ゴフ!は嫌われ、るわよ!ゲホッ!」 「あっはっは!」 そこには未だにむせつつ答える私を見て、堪えきれなくなったように笑い出すジェームズがいた。 彼の笑い方は他人を不快にさせない笑い声。しかし、ここで笑うのはあまりにも失礼だ。思わず天を仰ぎ、叫んだ。 「ジーザス!!!」 「ちくしょう、だなんて女の子が使う言葉じゃないねぇ」 バッとジェームズの方を向いて声を荒げた。彼はいかにも涼しげな表情をしていた。 「そもそも、アナタが何だろうだなんて言うから」 「そもそも、君が適当に恋なんて返事をするから」 素早くかつ的確なことを言われて思わず黙ってしまった。ジェームズは特に勝ち誇った様子でもなく、かと言って不快な表情も見せず、ニッコリと笑っていた。 一瞬天井を見て、また彼に視線を戻しても、やっぱり表情に変化は無かった。 しばらく、向かい合って睨みあう。と言ってもジェームズはにこにこと微笑んでいたけれど。 やがて、ジェームズが口を開いた。 「何だろう、って言うのはに対する気持ちだったんだけどね」 目を見開く、本当はもっと驚きを表現してみせたかったけれど、いっぱいいっぱい。もう限界。 何も言えない私の代理をするように彼は続けた。満足したように立ち上がり、にっこりと私に笑いかけた。 「ズバリ!と言う答えをくれたよ、君は。思わず納得したなぁ、僕」 そしてまた他人を不快にさせない…いや、悪気の無いようにみせる笑い声を残してジェームズは談話室から出て行った。私はさっき睨みあっていた時と同じ格好で止まったまま。 そうして、私は本日二度目のジーザスを叫ぶのだ。 |