「ジェームズって、鏡みたいだね」
はそう言った。
ジェームズはクスクスと笑う。
「君がそう思うんなら、そうなんだろうね」





08:鏡


とジェームズは微妙な関係、だと思う。
恋仲ではないし、友達という表現もしっくりこない。

同じグリフィンドール寮なのに、用事があるときしか話をしない。


そんな二人が深夜、談話室で会っていることなんて、きっと誰も知らないだろう。






「おはよう」

が談話室へきたとたん、ジェームズはそう声をかけた。
怪訝そうな表情では返事をする。

「もう夜だよ」
「だって、今起きたんだろ?」
「……何で知ってるの」
「それはヒミツ」

にやりと笑うジェームズ。
もつられて、クスクスと笑ってしまう。


おいでおいで、と手招きしながらふざけた口調でジェームズは言う。

、そんな格好で男と二人で会うのって反則だと思うよ」

白いフリルのついたキャミソールと黒い半ズボン。
『そんな格好』のは、言われるままにジェームズの隣に座る。
ジェームズはものすごく自然な仕草で、の肩を抱き寄せた。
何も知らない人が見たら恋人同士に見えるんだろうな、とは考える。

「だって熱いもん。夜だから誰も見ないだろうし」
「僕は見てもいいんだ?」
「ジェームズはいいの。そういうことしない人だって信じてるから」

はジェームズの目を見て、笑いながら言った。
ジェームズはの髪をいじりながら、さらにに近づいた。



「……でも、さ」

いつになく真剣な表情で、ジェームズはにささやく。

「今ココで無理矢理……ってのも、できるんだよ?」


は今にもキスしてしまいそうなぐらい近づいてくるジェームズの目を、じっと見た。
あと、1センチというところでジェームズはピタリと止まった。







じわり、と
静寂が満ちてくる。




「しないよ。ジェームズはしない」


きっぱりと言い切るを見て、ジェームズはクスクス笑う。
ソファから立ち上がり、ジェームズは思いきり伸びをした。

「そんな目で見られちゃ、したくても出来ないよ」



はじっと座ったまま、ジェームズを見上げた。
少しだけ迷ってから口を開く。



「リリーとは、してたよね。このあいだ」
くるり、とジェームズは振り返った。
きっとニヤニヤしてるんだろうとは思ったけど、違った。

今にも泣きそうな、葛藤と切なさとそれから後悔が混じった表情をしていた。


思いがけないジェームズの態度に、はそれ以上何も言えなかった。
からかってやろうと思ったのに。


「見てたんだ?」
「うん、偶然」
「リリーとは、なんでもないよ」
「でもキス、してたね」

「僕のこと、好きって言ってくれたから……」

言い訳するようにそう言うジェームズ。
は、ふぅんと相槌をうつ。


「でも、好きになりそうなんだ」


ジェームズは、そう言った。

は興味無さそうにまた、相槌を打った。
それから面白そうに、こう言った。

「ジェームズって……」




どこかでフクロウが鳴く声がして、ロウソクがじじっと音を立てる。


「ジェームズって、鏡みたいだね」

はそう言った。
ジェームズはクスクスと笑う。
「君がそう思うんなら、そうなんだろうね」







ジェームズは鏡だから、自分から行動しないと何も変わらない。


だけど、は。

ジェームズが来なくなる、その日まで。
は夜の談話室に来ようと思った。
恋仲でも、友達でも、ないけれど。








08 鏡 * 犬君
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